菌糸ビンを作る時の水分量については、沢山のホームページでいろいろな説が上げられていますが、菌糸ビンに幼虫を入れた後の水分管理については、私が知る限りでは全く書かれていませんでした。
「菌糸ビンに加水は必要か?」
酸素を通し、水分は通さない特殊なフィルタを使っているものの、菌糸ビンを交換する頃には、菌糸ビンを作った時のような湿り気はなくなっている。たぶん、フタの隙間などから少しずつ水分は逃げていくのでしょう。
しかし、あの事件が起こるまでは菌糸ビンに対する加水の必要性など全く考えていませんでした。その事件とは・・・・。
大半の個体が蛹化羽化し、残り10頭ほどが蛹化せずに幼虫の状態でいた時の事です。
1頭の幼虫が蛹室らしきものを作っているようでしたが、菌糸ビンの中が乾燥気味で、ボロボロとはがれた蛹壁が、蛹室の底に溜まってなんとも危険な状態。
「水分が少ないからうまく蛹壁を固められないのだろう」
そう考えましたが、交換用の菌糸ビンが底を付いていたので、応急処置のつもりで菌糸ビンの中に50cc程の水を入れてみました。
しかし、白く菌糸が張り巡らされた菌床は水分を吸収しにくく、水は菌糸ビンの底に溜まってしまいました。
この幼虫は菌糸ビンの底から斜め上に向かうような蛹室を作っていたため、蛹室の端の一番低いところが1mmほど浸水してしまいました。幼虫が水に浸かったら一大事ですが、幼虫は蛹室の真中辺りにいたので水に浸かることはありませんでした。
ちゃんと菌床に水が染み込んでいくか確認するためにしばらく観察していると、その事件は起こりました。
なんと、蛹室の真中にいた幼虫が蛹室の端、水の浸水している方に移動を始めたのです。
しかも、端まで来ると、溜まった水に頭を突っ込んだではありませんか!。
あまりの出来事に唖然としておりましたが、幼虫は微動だにせず頭をずっと水に浸けております。
「水を飲んでいるんだ」
水分量が不足していた。そうなると他の菌糸ビンにも加水しなくては。
10本ほどある菌糸ビンに加水をする。
するとどうでしょう。10頭中2頭がガラス面に頭をピタリとつけ、口を上にしてガラス伝いに流れてくる水を飲み始めました。
実際口を動かしているとか、舌を出していると言う動きはありませんが、口の中に流れ込んでくる水を飲んでいるようでした。
そして、食痕が現れず死んでしまったとあきらめていた幼虫も、ガラス面まで掘り進んで来て顔を覗かせました。
さっきまでじっとして動かず、蛹化の時期を待っていたと思っていた幼虫たちが、いっせいに活動を再開し、あるものは坑道を掘り始め、あるものは水を含んだ菌床を食べ始め、あるものは直接水を飲み、と一気に活性が上がりました。
じっとしていたのは蛹化が近いからではなく水分が不足していたためであって、雨が降って水分が補給できるまで、ひたすらじっと我慢していたのだと考えられます。
あまりの出来事に写真を取るのを忘れてしまったのが残念ですが、この事件以来、菌糸ビンの水分量には気を使い、乾燥気味になった時は水分を補給することにしました。
「菌糸ビンを交換して一ヶ月くらいたつと落ち着いてしまい、菌床を食べなくなってしまった」と言う事が良くありますが、水分が不足し、食べたくても食べられずじっとしている可能性も出てきました。
「新しい菌糸ビンに交換したらショックで蛹化してしまった」と言うのも、もしかしたら前の菌糸ビンでは水分が不足していたため蛹化出来なかったものの、新しい菌糸ビンに移され水分補給が出来たので晴れて蛹化で来た・・・・なんて仮説も立てられるかもしれません。
食べるわけでもなく、蛹室を作るわけでもなく、ただじっとして全く動かない幼虫は、もしかしたら水分が不足している可能性も!。
菌糸ビンの加水につきましては、新たな事実が分かり次第このページにて公表していきたいと思います。 |