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産卵してるかな?



産卵セットに入れたオオクワガタが産卵しているかどうかという質問を、毎年沢山いただきます。
産卵していれば菌糸ビンや発酵マットを購入しなくてはなりませんし、
産卵していないとなるとそれらが無駄になってしまいます。

さらに、産卵には2ヶ月もの期間を必要としますので、
一度産卵に失敗すると温室でもない限り来年まで待たなくてはならない事態になりかねません。

ですので産卵しているかどうかは大変重要な問題でして、
なんとしてでも結果が知りたいという気持ちは痛いほど分かりますが、
産卵しているかどうかについては実際に観察していてもなかなか判るものではありません。

それを、文章や一枚の写真などで判断することはまず不可能です。

しかし、産卵してる可能性の高い状況やメスの行動などは、少しずつ分かってきましたので、
写真を交え、まとめてみました。




【ペアリング中の観察】

オオクワガタのメスは交尾が終わると、体内の卵のため、そして1ヶ月以上に及ぶ産卵のた
めに沢山栄養を摂る必要があります。

そのためペアリング中のメスは、オスに守られるようにして、一心不乱にエサを食べ続けます。

ペアリング前の栄養状態にもよりますが、
3,4日はエサに執着する日が続きます。

量にすると16gのゼリーをペアリングの期間中(1週間)に2,3個ほど。

しかし、オスが成熟しておらず交尾が成立していなかったり、メスが成熟しておらず産卵でき
ない状態だと、このような食欲の増加は見られません。

また、普段は物音がするとすぐにマットの中に隠れてしまう臆病なメスでも、産卵に備えて栄
養を蓄えている時期は、多少の物音でもエサから離れようとしなくなります。
こういったエサに執着する姿勢も、メスが産卵に向かっている良い証拠になります。

1週間程度のペアリングも終盤になり、栄養も十分満たされるようになると、メスは産卵場所
を求めて、活発にケース内を動き回るようになります。

夜、ケース内を動き回り、プラスチックの壁を必至に登る姿を頻繁に観察できるようですと、産卵場所を求めている可能性が高く、産卵成功へ期待が高まります。

さらに、観察によって驚いたメスが一度マットに隠れてしまっても、10分もしないうちにマットか
ら這い出てきて、またケースを登ろうとしたり、日中にもかかわらずケースを登ろうしていたり
するほど脱出に執着しているようですと、かなり産卵成功の可能性が高いです。

逆に、夜、ある程度エサを食べると、そのまま樹皮の下などにもぐりこんでじっとしているようですと、産卵成功の可能性はあまりありません。

メスが成熟していないか、または気温の設定や前回の産卵時期などの条件面での問題が考えられます。

ただ、相手は生き物ですので、交尾の様子を実際に確認できない限り、ペアリングが成功し
たかどうかなど誰にも分かりません。ですので、ここに書いてある事は「ネコが顔を洗うと雨が
降る」程度の目安としてお考えください。

【産卵セット初期の観察】

オオクワガタのメスは、産卵が始まるとまったくエサを食べなくなります。

これは、1ヶ月以上かかる産卵の途中でエサを求めて飛び立てば、せっかく見つけた産卵場
所に戻ってこられない公算が大きいために、オオクワガタが手に入れた特殊な能力と考えら
れます。

ですので、活発に活動している形跡はあるものの、エサを食べた形跡がまったく無いようです
と、産卵している可能性が非常に高いです。

逆に、あまり活動はせず、ほとんどエサ皿の下などでじっとしている事が多くて、エサが定期的に食べられているようですと、産卵している可能性は低いです。

また、温度や湿度が産卵に適していない場合もオオクワガタは産卵しません。

産卵に適した温度は24℃〜28℃程度です。産卵セットの中は、マットや産卵木が分解され
たり発酵したりする時の発熱により、外気に比べてかなり高温になりますので、5月以降に産
卵セットを組めば、最低気温を下回る事はまずありません。

気を付けなくてはならないのが最高気温です。日中30℃を越えるような室内に産卵セットを
置くと、産卵セットの中は発酵熱などで軽く33℃を超えてしまいます。このような高温ではオオ
クワガタは産卵するどころか、自分の生命の危機を感じて逃げ出そうとします。

産卵セットの中が必要以上に高温の場合、オオクワガタのメスは発酵熱によってさらに熱くな
っているマットの中には潜って行かず、比較的温度が低いマットの上でじっとしている事が多く
なります。

産卵セットに投入してから、1週間たっても一向にマットの中に潜って行かず、いつも地表近く
でじっとしているようですと温度が高すぎる可能性があります。産卵セットを涼しい場所に移し
ましょう。

水分が多すぎて押すと水が染み出してくるような産卵木からも、かなり乾燥が進んで表面がカ
サカサになってしまった産卵木からも幼虫を割り出した事がありますので、湿度に関しまして
はそれ程神経質にならなくても大丈夫です。

先ほども申しました通り、産卵セット内は外気に比べて高温になりますので、湿度が高いと産卵セットに使用したコンテナボックスのフタに水滴が付くようになります。

その水滴を拭いてあげる程度で大丈夫です。

逆に、コンテナボックスのフタに水滴が付かないようですと、乾燥しすぎている可能性がありますので、軽く霧吹きをしてあげると良いでしょう。

【産卵セット中期の観察】

ペアリングがうまく行き、産卵セットの温度や湿度が適切に管理されていれば、オオクワガタ
のメスは産卵セット投入後、ほんの数時間で環境に慣れ産卵木を削り始めます。


通常ですと、オオクワガタのメスは自分の身を守るために、マットの中に潜り、そこから産卵木を削り始めます。

しかし、昼間でも光がまったく入らないような押入れの奥などに産卵セットを設置すると、地表に出た部分から産卵木を削り始める事が良くあります。

このような場合、産卵木がまるで裂きイカのように、長さ1cm程度の細い棒状にむしり取られているのが観察できると思います。

新たに削られた場所は、周囲と比べて色が白いのですぐに分かります。
このような削り痕があれば、無事産卵してくれる可能性がかなり高いです。


画像にポインタを合わせてみよう。クリックしちゃダメだよ
地表に出た場所から産卵木を削り始めた場合、産卵木を削る様子を観察できる事があります。

しかし、オオクワガタのメスは非常に警戒心が強いため、ちょっとでも異変を感じるとすぐに産卵木を削るのをやめてしまいます。

また、頻繁に産卵ケースのフタを開け観察していると、オオクワガタのメスが、産卵セットを危険な場所と認識し、産卵自体をやめてしまう可能性もあります。

覗きたい気持ちは痛いほどわかりますが、産卵木を削っているのが確認できたあとは、産卵
セットを覗き込むような事はせず、静かな場所で産卵に集中出来る環境を整えてあげるの
が、産卵成功への近道です。

真っ暗な場所に産卵セットを設置しても、常に地表に出ている部分から産卵木を削るわけで
はありません。マットの中から産卵木を削り始めると地表は何の変化も無く、産卵木を削って
いるかどうか確認できません。

オオクワガタのメスにも個体差があり、警戒心の強いメスは、地表にほとんど削り痕を残さず
に、産卵を終了させてしまいます。ですので、地表に削り痕が現れないからといって産卵して
いないわけではありません。

まったく削られた痕がない産卵木でも、埋めたはずのマットがどかされて、産卵木の輪郭がくっきり浮き出ているような場合は、メスがその産卵木にかなりの興味を示した証拠ですので、地下の見えない部分で産卵している可能性が高いです。

この時期は、産卵しているかどうかとても不安になり、誰かに質問して明確な回答をもらいたく
なりますが、産卵セットを実際に目で観察しても産卵しているかどうか明確な答えは出せませ
ん。ましてや掲示板などに投稿された写真や文章だけで判断するなんて到底無理です。

削り痕が確認できないと不安になり、毎日のように産卵ケースを覗き込みたくなりますが、覗
き込む事によりメスがさらに警戒し、地表に削り痕を残さなくなってしまいます。
ですので、産卵ケースを覗き込むような事はなるべく避けるようにしましょう。

【産卵セット後期の観察】

エサなど目もくれず産卵に集中していたオオクワガタのメスが、体内に蓄えた栄養が尽き、ゼ
リーを食べて栄養補給を行うのが3週目を過ぎたあたりです。

地表に削り痕が見つからずゼリーも減っていないとなると、メスが産卵しているのか休眠して
いるのか分からず、とても不安になりますが、3週目を過ぎたあたりから、急激にゼリーが減
り始めるようになると、産卵している確率が高いです。

オオクワガタのメスは驚くほど食溜めが利きますので、休眠中は1、2ヶ月間何も食べない事
などザラですが、何も食べずに産卵の激務をこなせるのは、栄養を十分蓄えた状態でもせい
ぜい3週間が限度のようです。

ですので、今まで食べた様子が無かったゼリーが、3週目を過ぎたあたりから急激に減り始
めるのは、メスが休眠中ではなく、産卵作業をしていた証となります。

しかし、これもかなりの個体差があります。1、2週目あたりから産卵作業をしながら、ダラダ
ラとゼリーを食べるメスもおりますし、産卵セット投入前に十分栄養を蓄えられなかったメスや
体の小さなメスは、3週目を待たずにゼリーを食べ始める事もあります。

4組の産卵セットを組んで、この法則に当てはまるのは2〜3セット、確率にして60%程度で
すので、あくまで目安として「3週過ぎた辺りからゼリーが減り始めるのは良い兆し」程度にお
考えください。

休眠するための隠れ家を作る場合、オオクワガタのメスは通常、産卵木に対し地下から横穴を掘ります。

ですので、はっきりとした産卵痕は見られない場合でも、立てた産卵木に対し縦に深い穴があけられているようですと、産卵している可能性が非常に高いです。

さらに、この写真のように、マットで埋めた産卵木が掘り出され、丸かった産卵木があちこち削られてボコボコになっていれば産卵はほぼ成功です。

柔らかい産卵木を使っていると、上の写真のようなはっきりとした産卵痕が現れますが、
硬い産卵木ですと、そこまではっきりとした産卵痕が出ない場合もあります。

ですのではっきりとした産卵痕がない場合でも悲観せずに、1か月後の割り出しに期待しましょう。

ちなみに左の写真の産卵木からも元気な幼虫が8頭割り出せました。

いかがでしたか、以上が当サイトによせられる質問の中で一番多い「産卵しているかどうか」
についての私の回答です。とは言うものの、生き物というのは気まぐれですので、ここに書い
てある事が全て正しいという訳には行かず、例外が数多く存在するのも事実です。
ですので、ここに書いてある事は、あくまで目安としてお役立てください。

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