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2005年9月16日 オオクワガタ飼育に新発見
最近、寝る前にオオクワガタの幼虫たちの観察をするのが日課になってきています。
早めに寝る支度を済ませ、赤色灯を片手に観察にいそしむ毎日です。
観察に夢中になって、つい夜更かししてしまう事もしばしば。
寝不足気味の日も珍しくなくなってしまいました。

幼虫の半分を観察には不向きなワインセラー内で飼育しておりますが、それでも私の部屋の洋服タンスには60頭以上の幼虫たちがおります。いくら寝ている事の多い幼虫たちでも、60頭もいれば必ず2,3頭は観察に適した位置で活動していてくれます。

最近興味を持って観察しているのが幼虫のエサの食べ方、触手のようなものと牙を使ってうまく木片を口に運ぶ姿をカメラで捉えようと必死にがんばっております。
しかし、これが難しい。暗い部屋のなかでのマクロ撮影。しかもガラス越しですので、ピントがガラスに合ってしまったり、フラッシュの反射で白く飛んでしまったり・・・・。
近頃、撮影はほとんどあきらめ状態で、もっぱら観察に専念しております(笑)。

オオクワガタの幼虫の口ってあまりにも小さすぎて、肉眼ではどのようにエサを食べているのかあまり分からないんですよね。「何か良い方法は・・・・」って、考えるまでもなく、こういう時に使うのが「虫眼鏡」。使い道がそのまま名前になっているのですから間違いありません。

ガラクタ同然にしまわれていた虫眼鏡を探し出し観察してみることに。
するとどうでしょう、そこには今までとはまったく別といっても良いほどの世界が広がっていました。オオクワガタの幼虫が木片を口に運んでいく様子が手に取るように分かります。

「へ〜、は〜」

なんて感心しながら時の経つのも忘れて観察しておりました。
しかし、時間が経つにつれて問題が。
左手で赤色灯、右手で虫眼鏡を持って観察していると腕が痛くなる(^_^;)

「腕が痛くならずに長時間快適に観察する方法を考えねば!」
赤色灯の代わりはあります。釣りで使っているヘッドライトです。
あれに赤いセロハンを付けてあげれば片手があきます。虫眼鏡を交互に持って観察すれば長時間の観察にも耐えられるでしょう。

しかし、もう一歩進んだ観察方法を思いついた。

ヘッドルーペ!しかもライトつき!。

これさえあればもう怖いものなしです。両手がフリーになってどんな長時間の観察にも耐えられます。

あとは足腰が痛くならないように、毎日スクワット100回と背筋100回を心がければ完璧です(笑)。

さあ、観察を始めましょう!。

ヘッドルーペから覗く世界はすべてが大きく見えます。
粉のようになったマットも、1つ1つがごっつい木片のように見えます。
肉眼では揃っている様に見えた粒の大きさもヘッドルーペで見るとバラバラ。
粉のように小さいものから、とても幼虫の口に入りそうもない大きさの木片まで多種多様です。

オオクワガタの幼虫の口の横には、3対の足とは別に先端に小さなハサミの付いた触手のようなものがあります。

幼虫は木片の1つ1つをこの触手で丁寧に丁寧に挟んでは口に運んでいます。

どんな小さな木片も、器用にはさんで口に運ぶ姿はとても虫には見えません。
まるで手の器用な哺乳類、ハムスターやラッコの食事を見ているようです。

「へ〜、上手に挟んで運ぶもんだなあ〜」
と、感心しながら観察していると、今度はちょっと大き目の木片を触手で挟んで口に持っていきました。

「おっ、今度のは大きいぞ」
これは1口で食べられそうにありません。かといって自慢の牙でバリバリつぶせるほど大きくありません。歯で噛み砕いて食べるのでしょうか。

息を呑んで見守っていると、口に持っていった木片を触手で器用に持ち替えながら回転させ始めました。
「すんげ〜器用だな〜」
リスがクルミを両手で回転させながら、その硬い殻を歯で削っている様子にそっくりです。
普段の鈍重な行動からは想像も付かないほど、口の周りは緻密かつ高速に活動します。

「回転させて、周りから食べるんだ」
そう思ってみていると、一通り回転させたあと、木片をくわえたまま頭を胸のほうに曲げ始めました。
「ん、どうした?」
予想外の行動にびっくりしていると、幼虫は胸の近くまで頭を曲げてきて、そして胸にある小さな3対の足で口にくわえていた木片を口から掻き出して捨ててしまいました。

「食べないんだ・・・・」
どうやら、口の周りで回転させていたのは、木片の大きさや形状を測るためだったようです。
そして、食べられる大きさではないと判断し、捨ててしまったようです。

「へ〜、なかなかやるもんだなあ〜」
こんな発見があるからオオクワガタの飼育はやめられません。

オオクワガタの幼虫が口に運んで食べるのは小さくてやわらかい木片のみ。
大きくて硬い木片は食べられないようです。
あの大きな牙を見る限りでは、朽木を挟んでバリバリ砕いて食べている印象がありますが、
実際自然界では鋭い牙をカンナのように使い、朽木を薄く削り出して食べているのでしょう。

菌床の中でも、あの大きな牙を使うことがあります。
頭を大きく縦に振り、鋭く飛び出た牙をまるでクワかツルハシのように使って、トンネルを掘る・・・・というより削っている姿をよく見かけます。この行動からも自然界では牙をカンナの様に用い、朽木を薄く削って食べている姿を伺い知る事が出来ます。

牙をツルハシのように使って掘り進んでいる姿を観察していた時の事、奇妙な行動を目にしました。その幼虫は、牙で菌床を削ったり、菌床を食べたりしています。
同じ菌床なのに、なぜか食べる対象と、掘る対象に分けているようです。
周りはすべてエサなんですから、変なやつですよね。

そう思いながらも、ヘッドルーペで観察しているうちにその原因がだんだんわかってきました。
ガラス面に沿って進んでいるその幼虫は、ガラス面の皮一枚を残して掘り進み、そしてガラス面に残った皮一枚を食べているようなんです。

「もしかして、菌床の皮膜を選んで食べているのか?」
そう、ガラス面に残った皮一枚というのはもちろん白くなった菌床の皮膜。
もしそうだとしたら、とても重大な発見です。


画像にポインタを合わせてみよう。クリックしちゃダメだよ
「もっとよく観察しなきゃ」
本当に白くなった皮膜だけを選んで食べているのか、決定的な証拠をぜひこの目で見たい。そう強く思いながら観察を続ける。

クワガタの幼虫は確かに茶色い菌床を牙で削ってどかし、そしてガラス面に残った白い皮だけを選んで食べているようです。

しばらく観察していましたが、この幼虫は白い皮膜のみをおいしそうに食べていました。

もちろん、いつも白い皮膜だけ食べているわけではなく、茶色い菌床も食べますが、幼虫にとってあの白い皮膜は特別な食べ物であることは確かなようです。

「幼虫は白くてやわらかい皮膜が大好物・・・・」

あまりにショッキングな光景でした。だって、今まであの皮膜はいらないものだと思っていましたから。菌床ブロックを崩す前にナイフで切り取ったあと、ゴミ箱にポイ。

幼虫にしてみれば一番おいしい所を捨てられていた事になります。
鉄板焼きのお店でサーロインステーキの周りについている脂身をスーッと切り捨てられてしまい「おいおい、そこが一番おいしい所なのにぃ〜」と心の中でつぶやき、涙を流している私の様(笑)。

菌床ブロックについているあの白い皮膜は、菌糸ビンの底に詰めて、期待の幼虫のみに与えるような、とても貴重なものだったようです。次回菌糸ビンを詰めるときに実践してみます。

驚きの発見が続きましたが、まだまだこれで終わりではありませんでした。

左の菌糸ビンは訳あってひっくり返しているのですが、ビンの中の幼虫は何をやっているかわかりますか?。

実はこの写真を撮る5秒前に、とんでもない光景を目の当たりにしました。

写真のように仰向けの状態で、この幼虫はのんびりしていたんですが、不意にお尻のほうがもぞもぞっとしたと思ったら、コロッケのような糞がウニュ〜って出てきました。
「こいつアホだ、自分に糞が落ちてくるぞ」
半ば呆れ顔で様子を見ていると、この幼虫はすばやく上体を丸めたかと思うと、お尻から落ちかけた糞を牙ですばやくキャッチ。

「ゲッ!」

本当にすばやかったです。
普段はなかなか見られない素早さで、何のためらいも無く糞を牙でキャッチしてしまいました。
絶句とはまさにこの事。幼虫の思わぬ行動に私の頭はパニック状態。しかし、幼虫は手馴れたもんと言わんばかりに、柔らかい糞を崩さぬよう、微妙な力加減で上手に挟んでいます。
あのごっつい牙からは想像も付かない繊細な作業を見事にこなしています。

その幼虫はまた上体を伸ばし、牙ではさんだ糞を壁にそっと押し当てて、そこにくっつけてしまいました。そして壁にくっつけたコロッケのような糞を、今度は頭を使って壁に押し付け慣らしていくではありませんか!。慌ててカメラを構えて撮ったのが上の写真です。

糞が出てから5秒もたっていなかったと思います。
洗練された一連の作法のごとく、スムーズかつ迅速にこなしておりました。

菌糸ビンの中に糞が存在しない事は頭の中でなんとなく疑問に思っておりましたが、まさかこんなからくりになっていたとは・・・・私にとってはまさに目から鱗でした。

頭で押し付けられた真新しい糞は、周りと見事に同化し、完璧になじんでしまいました。
と、言う事は・・・そう、あの茶色い色をした物はすべて糞だったんです。
あまりにも新鮮そうな色をしていますので、すべてがそうでないとしても、かなりの食べ残しが混ざっているだろうと思っていたのですが、大間違いでした。

あの新鮮な色にだまされて「まだ食べ残しがあるから・・・」なんて勘違いし、ビンの交換のタイミングが遅くなっていたのも事実です。これからはもうだまされない!。

幼虫の食べ方を観察するつもりが、いろいろな新しい発見にたどり着くことが出来ました。
ちょっと興奮しすぎて今日の日記は長くなってしまいましたね(笑)。
ここまでお付き合いいただいたお礼といっては何ですが、耳寄りな情報をひとつ。
幼虫が菌糸ビンの底に張り付いて、上のほうの菌床を食べてくれないとお嘆きのあなたに送る実験です。

ビンの底ばかりにいて、上の方の菌床を食べてくれないのなら、ビンをひっくり返してしまえばよい。アホのような単純な発想で実験してみました(笑)。実験結果はこちら

いかがでしたか?。良い感じで食い下げて行ってくれているでしょ。

ポイントは幼虫が落ち着いてからひっくり返すという所。幼虫が落ち着かないうちににひっくり返してしまうと、単純に下に移動されてしまいます。

目安はビンに移してから一週間程度。ビンの底の白い皮膜を半分以上食べているようでしたら、ひっくり返す潮時です。写真のようにガラス面についている白い皮膜をらせん状に食べながら食い下げて行ってくれれば完璧です。一度試してみてはいかがでしょうか。

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