親戚の子がこの春から小学校の教師になる。
「学級崩壊とかになったら大変だねぇ〜」なんて、とりとめもない事を話していたら「小学生のとき一番印象に残った先生ってどんな先生？」って質問された。
「一番印象に残った先生・・・・」
子供のときの記憶って覚えてます？。
同窓会とかで集まって誰かが「あの時こんな事があったよなぁ〜」って言うと、みんな「そう、そう」って盛り上がるのに私はまったく覚えていない。物覚えが悪かったのか記憶の保存期間が短く設定されているのか・・・・（笑）。
でも、驚くほど鮮明に覚えているひとつの事件がある。
それは小学校３年生のときのこと。
何が原因かは忘れましたけど些細なことでクラスの女の子とケンカになった。
子供のケンカはすぐに手が出る。私は兄弟が多かったから兄弟ケンカなんて日常茶飯事。
それだけにちゃんと守るべきルールがあって、顔やお腹はけして蹴ったり叩いたりしてはいけなかった。普通のケンカはケツを蹴ったり叩いたりする。本当に怒ってガマン出来ないときは頭に手が出る。
この女の子とのケンカの時もすぐに手が出てしまったが、頭を叩きたいのをグッとこらえてケツを叩いた。自分ではかなり自制して手加減したつもりだったけど、その女の子は当然「先生に言ってやる」と、捨てせりふを吐いて去って行った。叩いたと言っても軽くポンと叩いた程度。それくらいで先生に怒られるわけがないと私は高をくくっていた。
帰りのホームルーム。
その女の子は手を上げて「お尻を触られた」と担任だった初老の女の先生に訴えた。
「触られた・・・・？」
意味が分からなかった。「叩かれた」なら分かる、それはいけない事だ。いけない事だと分かってやったんだから、しかられてもしょうがない。でも「触られた」って・・・・・。
状況がまったくつかめなかった。
しかし先生の顔は見る見る赤くなり、私に向かって前に出て来いと怒鳴った。
わからない・・・・だけど前に出て行った。
私は先生に叩かれた。何度も何度も顔を平手で叩かれた。叩くたびに先生は「いやらしい、いやらしい」と私をののしった。私はただ訳も分からず嵐が過ぎるのをじっと耐えていた。
家に帰って考えた。なぜ逆鱗に触れたのか。私はあれほど叩かれるような悪いことはしていない。自制して軽く叩いたんだ。相手はほとんど痛みなんて感じなかったはず。
現にあの女の子は「叩かれた」ではなく「触られた」って言っていた。
触られた・・・・なぜ？。
「いやらしい」と何度も何度もののしられた。「いやらしい」を辞書で調べた。
理解できなかった。
１週間、１ヶ月・・・釈然としない日々が続いた。
女性のお尻は触ってはいけないものなのだと言う事が、うっすら分かるようになったのは、それから２年の月日が流れた小学校５年生の時だった。「いやらしい」と言う言葉の意味が本当に分かるようになるには、さらに数年の月日が必要でだった。
「いやらしい」のは全てを知った上で「叩かれた」を「触られた」に変えたあの女の子。
私はあまりにも無垢であり無知だった。
しかし、今でもあの時の心の傷は癒えていない。
「タイムマシンがあったらどの時代に行きたい？」
私はあの時あの場所に行ってあの初老の女の先生の胸ぐらをつかんで・・・・・・
ケツを軽く叩いてやるかな（笑）。 |