4月1日に統合したみずほ銀行のオンラインシステムがうまく作動しなくて大変なことになっている。引き落としが2重にされたり、送金されていなかったり。
コンピュータのプログラムが原因と言う事は分かっているけど、どこをどう直したらいいのかまったく分からない。多分担当のシステムエンジニア(SE)は不眠不休で対策を練っていることでしょう。なんか昔を思い出す。
私は、自営業を継ぐ前はSEをやっていました。4年ほど。
担当は病院の会計コンピュータ。
病院の会計ってまったく分からないでしょ。
月に一度しか算定できないものとか、保険によって金額が変わったり、住んでいる地域によって割引されるものがあったりして、とっても複雑なんです。
それを、誰でも簡単に出来るようにするために作られたのが「医事会計ソフト」。
普通のソフトなら売ったっきりで終わりなんですけど、この医事会計ソフトはそうはいかないんです。
なんと、毎年4月になると医療費の算定方法が変わるんですねー。
ほら、新聞とかに載っているでしょ「医療費の負担増」とか「医薬分業」とか。
ああ言うやつをするために、厚生省のお役人がとんでもない量の変更を強制してくるんです。
俗に言う「医療費改定」略して「医改」。
医改が行われるのは大体毎年4月1日。
だから、その2ヶ月前から病院にこもりっぱなしでプログラムの修正を行うんです。
昼間は病院の人がコンピュータを使っているから、夜に行ってプログラムを直す。朝、病院が始まる前にバックアップを取って、もとの状態に戻しておく。
このコンピュータ、全国に100台くらいあって、この時期3人1組で修正に行くんです。
最初の2年間は先輩について行ったんですけど、3年目からは後輩を連れていく羽目に。
つまり、私がその病院の責任者。
もし、4月1日にプログラムがうまく動かないと、病院の会計が出来ない。
患者さんからお金を取らずに帰ってもらう事に。私の担当した病院は1日の来院数が500人くらい。相当な額になる。
プログラムを修正し、テストを何回も繰り返し万全を期したけど、4月1日はまさに針のむしろ状態。コンピュータルームでコンソールを凝視してエラーが出ないことを神に祈るだけ。
一度、エラーが出たことがあった。
朝の緊迫した状況を脱して、病院の食堂で遅い朝食を取っているとき
「エラーが出ました!」って後輩が飛び込んできた。
ちょうどスパゲティーを食べ終えてセットのコーヒーを待っているところでしたが、後輩に会計を頼んでコンピュータルームに走りこむ。
コンソールを見るとエラーの文字が。英語で書かれているんですけど訳すと
「プリントアウトしようと思いましたが、プリンターの電源が入っていませんでした」ってこと。
病院の人が月に一回の入院患者の請求書を印刷しようとしたんですけど、プリンターの電源を入れるのを忘れていただけ(笑)。
病院の人にとってみれば「あら、電源が入っていなかったわ」くらいですけど、私はコーヒーを飲み損ねたばかりか、そのあと、とんでもない緊張と余りのばかばかしさの落差から腹痛を起こしてしまいました。電源ぐらい入れておけよなー!。
というより、エラーの意味くらいしっかり覚えて、これくらいのエラーで呼びにくんなよなー(笑)。
コンピュータシステムは難しいです。
偶然が偶然を呼んで10万回に1回の奇跡でエラーになるようなことでも、みずほ銀行くらいの規模になると10万回のアクセスなんてあっという間の出来事。
でも、10万通りのテストを100人くらいのSEでテストしようと思ったら膨大な時間がかかります。
すべての業務を想定してテストを繰り返して来ているはずですが、全国の支店から一斉にデータを送るなんてテストは出来ないし、その中には予想を越えたとんでもない組み合わせが偶然に起こることも。すべてを予測することの難しさがそこにあると思います。
そう言えばロールプレイングゲームでのこと
洞窟の入り口のすぐ前に気球を降ろしたら気球に乗れなくなってしまったことがあった。
気球に乗ろうとすると、そのすぐ後ろの洞窟に入ってしまう。
何度やってもだめ。気球に乗らず洞窟に入ってしまう。
洞窟の入り口の直前に気球を下ろすなんて誰でも考え付きそうなことだけどプログラムテストには含まれていなかったみたい。
みずほ銀行のSEのことを考えるととてもかわいそうな気がします。
上司はソフトのことなんかまったく分からない世代。
「いつ直る」「どこがおかしい」を繰り返す。車のへこんだ部分を直すのとはわけが違う。
バーチャルな世界。テストを繰り返さなければ悪いところも見えてこない、いつ直るかめどなんかたたない。
多分、今も不眠不休でバグの洗い出しに没頭していることでしょう。
マスコミもやんややんやと騒ぎ立てないで、もう少し理解してあげてもいいんじゃないかな。
がんばれ、みずほのSE!。オレも口座を持ってるぞ!。 |