暖かくなってくると「どうすればシーバスが釣れますか?」といったメールを良く頂きます。
そういったメールを頂くたびに、どう回答してよいやら非常に悩みます。
どうすればシーバスは釣れるのでしょう?。
ボートに乗って活性の高いシーバスの群れに当たれば、どこにどんなルアーを投げても着水と同時に競い合うようにシーバスがルアーに食いつき、10匹や20匹なんてあっという間に釣れちゃいます。
逆に、テレビ番組などで湾内一の船長さんが日本屈指のプロアングラーを乗せて一日中釣り回っても、数匹しか釣れないなんて事もままあります。
釣れる時は釣れる、釣れない時は釣れない。シーバス釣りは「運」という事になります。
しかし、シーバスの釣果が運だけに左右されるのなら、私がこんなに長くをシーバス釣りを続けている事はなかったと思います。釣れない時にいかにして釣るかが最大のポイントであり、質問してくる方も一番知りたい所だと思います。
「釣れない時にいかにして釣るか」結果から言ってしまえばそれは「経験」。
経験を積めば積むほど、釣れない時にいかにして釣るかが見えてきます。
経験だなんて、初心者の方にとってはがっかりさせられる回答ですね。
しかしこれは事実だと思います。
たとえば、1つの裏技を聞いただけで簡単にクリアできてしまうゲームがあったとしたら、そんなゲームはすぐに飽きてしまう事でしょう。
しかし、やってもやってもやるたびに新たな発見があり、その発見によって少しずつゲームが上達していくとしたら、何度もそのゲームに挑戦しようとするはずです。そしてそのゲームの研究経過を発表するためのホームページが生まれ、たくさんの人が集うはずです。
簡単に答えが出るなら、こんなにたくさんのシーバスに関するホームページはなかった事でしょう。そして、これだけたくさんのホームページがあっても答えが見つからなかったからこそ、わざわざ私に質問のメールを送って来るのだと思いますが、逆に言えば、これだけたくさんのホームページがあっても、その答えは語りつくせないほど奥が深いという事になると思います。
仮に質問のメールが集中する春先の釣り方を考えてみます。
この時期はバチ抜け(ゴカイ類が産卵のために水面を泳ぎ回る)の季節になります。
バチは光に集まる習性がありますので、一昔前なら夜間明るい場所に行けばいくらでもシーバスは釣れました。しかし、その事が知れ渡ると、たくさんのアングラーが明るい場所に集まり、シーバスはすれて釣り辛くなってしまいました。
そんなある日、場所取りにあぶれて、仕方なく明るい場所から少し離れた所でルアーを投げていると爆釣した事がありました。バチ抜けの季節はそこで釣るようにしたのですが、釣れる時もあれば釣れない時もある。
しかし、たくさんのアングラーであふれる明るい場所よりは良い釣果を上げていました。
その場所に長く通うちに、釣れる条件が少しずつ分かってきました。
満潮の潮止まり、運河の明るい場所に集まったたくさんのバチは、潮が動き出すと潮の下流に流される。
そして、明るく危険な場所を避けて流れの下流でじっと待っていたシーバスの活性は一気に上がり、爆釣モードになる。それが釣れる原因でした。
さらに通い続けると、潮の流れが速い大潮の時、さらにはバチがこちら岸に流される向かい風の時が最高の条件である事を突き止め、その日、その条件にマッチするポイントに行くことで更なる釣果を上げることが出来ました。
そして最後に気が付いたのが潮の流れ。
普通、潮は入ってきた逆の動きで出て行きますが、東京湾のように運河が入り乱れていると、ひとつの島に沿って時計回りで入ってきた潮が時計回りで出て行くといった現象が起こります。この現象では上げ潮でも下げ潮でも流れの方向が一定で「明かりの下流」が常に同じになっているため、シーバスの群れがばらけず、いつも貯まっている事に気が付きました。
何度も何度も通いつめ、「偶然釣れた条件」を統計的に重ね合わせて行く事によって、「確実に釣れる条件」が見えてきた典型的な例です。
しかし、この例は場所の特定をしただけで、まだ肝心のルアーのセレクトや泳がせ方については何も触れていません。
「バチ抜けの季節は表層」というのが基本です。
しかし、上の条件にマッチするポイントに行くと、そこはかなりの確率でゴミが海面を覆っているはずです。このゴミをいかに処理するか、直面したゴミの量や種類によってたくさんの方法が考えられると思います。
さらに天候や水温、水のにごり具合によっても数え切れないほどの選択肢がありますし、バチの種類や量によっても攻め方を変えなくてはなりません。
このように春先の夜、灯りの下のシーバス釣りと言う極限られたピンポイントの条件でさえ、無限とも思えるような選択肢が存在します。
今日この場面では最高の釣り方でも、明日その場面では最低の釣り方になってしまう事も。
「どうすればシーバスが釣れますか?」というメールをもらっても、どう回答して良いのか悩んでしまう意味が分かってもらえたと思います。
シーバス釣りは、直面した条件でいくつの攻め方が思いつくかというゲームであって、思いつく攻め方の数は、主に経験によって決まるのではないでしょうか。10通りの攻め方の中から選んだ1つと、3通りの攻め方から選んだ1つでは、おのずと釣果も変わって来るでしょう。
日々経験を積む事で自分の武器となる攻め方の数を増やせば、今までは釣る事の出来なかったシーバスが釣れるようになるというのは、ある種ロールプレイングゲームのレベルアップのような楽しさもあります。
シーバスゲームには、最強の武器を手に入れる裏技などありません。
ないからこそ、私を含め、たくさんの人が少しずつレベルアップして行くのを楽しんでいるんだと思います。
とりあえず何も考えずルアーを投げてみませんか。
初心者なら釣行のたびにどんどんレベルアップして行く自分に気が付くはずです。
そして中級者になってなかなかレベルが上がらなくなると、毎回のようにレベルアップしていた初心者の頃が一番楽しかった事に気が付くはずです。 |