エサの量による発育の違いはありますが、カナヘビは生まれた翌年には卵を産めるようにな
ります。冬眠が終わった後すぐに交尾をするのではなく、ある程度体力が回復してから交尾を
行うようです。

また、カナヘビのメスは卵を産むとすぐに交尾ができる状態になりますので、オスと同居して
いれば産卵後の一両日中には交尾を行います。

産卵直後のメスは、動き出したオスにさっと駆け寄り、寄り添うように歩くことで交尾を誘うこと
があります。広い自然界では、見つけたオスに駆け寄る行動は効果的と思われますが、狭い
水槽内では、いきなり駆け寄って来たメスにオスがびっくりしてしまい、逆効果になっている場
合が多いようです。

交尾の準備が出来たメスは、後ろ足の付け根から臭いを出しているようです。

ほとんどの場合がいきなり噛み付かれてビックリしてしまったメスが、思わず反撃に出てしまうケースです。 反撃に出たメスが噛み付く位置は、ちょうど急所である首筋になるので、オスは慌てて逃げ出し交尾は不成立になります。

障害物などに邪魔されて上手く交尾の体制が整わない場合も、交尾を受け入れるつもりでい
たメスが痺れを切らし、オスに噛み付いて交尾を拒否してしまう事があります。

不運にもそんな交尾拒否が２，３回続くと、メスは噛み付かれる事に対し恐怖心を抱くようにな
ります。落ち着きがなくなり常にビクビクし、周囲の物音に対し過敏に反応するようになりま
す。さらに、別のカナヘビがハンティングなどでたてた大きな音に驚き、パニックになって猛ス
ピードで水槽のガラス面に激突する事さえあります。

そんなときは１週間ほど別の水槽に単独で隔離し、恐怖心を取り除いてあげてください。

交尾のためメスに噛み付いたオスは、メスを一定のリズムで前へ押します。それは０．８秒に１回ほどの割合。 どうやらこのリズムでメスを押すことで、噛んでいるのが敵ではなく、交尾を目的としたオスであることを相手に伝えて、メスの不安を取り除いているようです。

噛み付かれたメスが、交尾を受け入れられる状態だと、多少迷惑そうなそぶりを見せながら
も、ほとんど抵抗することはありません。

しかしオスはすぐに交尾に入ろうとはせず、メスの後ろ足の付け根の前後を何度も何度も噛
みなおします。なかなか交尾に入らないばかりか、時には間違えて腹や尾を噛むこともあるの
で、メスを食べようとしているのではと心配になるほどです。

もしかしたらメスに排卵を促しているのかもしれません。

最初に頭など後ろ足の付け根以外に噛み付いた時は、少しずつ噛む位置をずらして行き、最
終的に後ろ足の付け根にたどり着きます。

オスは噛み付きながら一定のリズムでメスを押し、押されたメスも反射的に前へ逃げようとす
るので、２匹はお互い前へ進んだり、横に引きずられたりしながら、５分ほど迷走することにな
ります。道の真ん中など、思わぬ場所で交尾しているカナヘビを見かける理由はここにあった
ようです。

やがて交尾へと入るのですが、それはあっという間の出来事です。 四つに組んでいた格闘家がいきなり身を投げ出して腕固めに行くがごとく、メスをぐっとひきつけて間合いを計ったと思った次の瞬間、オスは身を翻し自分の体をメスの体の下にもぐりこませて交尾を始めます。 身を翻してから交尾に入るまでほんの１，２秒の早業です。

オスはメスにかなり強く噛み付いているようですが、実際はそれほど強く噛み付いていないようで、交尾が終わったあとのメスのお腹には、歯形すら残っていません。

上手く交尾に持ち込むことが出来ました。 交尾は１０分程度で終わってしまう事もあれば１時間近く続く事もありますが、だいたい３０分程度が標準のようです。 オスが噛み付くのをやめたのを合図に交尾は終了します。

落ちないように必至に岩につかまるメス。 こんな状態でもオスはお構いなし。 噛み付いた上に、４本の足も全て使ってメスの体に抱きついています。 交尾が始まった後も、メスは動くことがあるので、決して振り払われないよう全力でしがみついています。

自分の子孫を残すこと、すなわち交尾こそ生きる全てとも言えるオスは、この瞬間に命さえ賭けているようです。 しかし、体内で卵を育て産卵する事こそが、最大の使命であるメスにとっては、オスの命がけとも言えるこの行為はかなり迷惑な様で、その温度差は表情に如実に表れています。

交尾後、１ヶ月ほどで産卵が始まります。