草むらの名ハンター、カナヘビは生きている小動物を獲物にして生きています。
とは言うものの、子カナヘビは環境への適応力が非常に強いようです。
大きなカナヘビは成虫のコオロギを食べるとき、丸呑みしやすいように羽や足をもぎ取ってから食べます。もちろん一匹でお腹いっぱいになる成虫のコオロギをしとめたのですから、羽や足などは見向きもせず捨ててしまいます。
しかし、コオロギの太い後ろ足は大きな筋肉の塊。
子カナヘビにとっては、十分お腹の足しになるご馳走です。
そのことに気が付いた子カナヘビたちは、水槽に落ちているコオロギの足を見つけると、食べるようになりました。
大きなカナヘビが成虫のコオロギを食べる度に捨てられて、水槽内のあちこちに転がっていたコオロギの足は、やがて子カナヘビたちによってきれいに食べられるようになっていました。
生きているものしか襲わないと思っていたカナヘビの意外な一面ですが、私は更なる驚愕の事実を見ることになります。
水槽内にはコオロギのエサとして、鯉のエサである「スイミー」をすりつぶした物が入れてあります。生まれたてのコオロギは非常に小さいので、すりつぶしたスイミーのカケラの陰に隠れていることがあります。
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小さなコオロギを主食とする子カナヘビは、それを知っていて、コオロギの餌皿の中に隠れた小さなコオロギを丹念に探します。
「ペロペロ、ペロペロ」
非常に優れた感覚器官である舌を使って隠れているコオロギのかすかな気配を探ろうとしています。 |
「ペロペロ、ペロペロ」
コオロギの気配を探ろうとして出した舌には当然スイミーが付いてきますが、カナヘビはそれがスイミーであることなど知る由もありません。
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しかし、舌をペロペロするたびに、口の中に広がる妙な感覚に子カナヘビは少し戸惑っているようです。
「この土はいったい・・・・」
一度探った場所に、3回くらい舌を出し入れして妙な感覚の原因を探ろうとしています。 |
スイミーを口の中に入れると、獲物を食べた時と同じような快感が得られるに事に、子カナヘビは気付き始めています。
しかし、ハンターとしての本能がスイミーへの執着からカナヘビを解き放ちます。
再びスイミーのカケラの陰に隠れているコオロギを探すべく、別の場所をペロッとやりますが、もちろんそこにもスイミーがあり、また妙な感覚に襲われ、その原因を特定しようと同じ場所を3回くらい舌で探ります。
やがて、餌皿の中のスイミーに向かって、舌をペロペロした時に得られる快感を覚えてしまった子カナヘビたちは、頻繁に餌皿の中にやってくるようになりました。
しかし、まだハンターとしての本能がなくなってしまったわけではありません。
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同じ場所でずっと舐め続ければよいのですが、1か所で舌を出すのはだいたい3回まで。
ちょっと移動して、また別の場所で舌を出します。
「この場所に隠れているコオロギを探るんだ」
まるでそう自分をだましているかのようです。
ハンターとして十分成長した大人のカナヘビはスイミーなど目もくれず、跳ね回るコオロギを追いかけている傍らで、子カナヘビは人目を避けるようにひっそりとスイミーを舐め続けています。 |
最初のうちはハンティングの最中に、偶然通りかかった餌皿の中のスイミーを舐める程度で、それほど長い間スイミーに固執することはありませんでしたが、餌皿の中に居座る時間は日に日に長くなってきました。
そしてとうとうスイミーの誘惑に本能が負けてしまう日が訪れました。
画像にポインタを合わせてみよう。クリックしちゃダメだよ |
一匹の子カナヘビが突然、餌皿の中に転がっていたスイミーの大きなカケラをくわえると、それをガリッと噛み砕いて食べてしまいました。
舌に偶然スイミーが付いてきてしまったというハンターとしての最後のプライドを捨ててしまった瞬間です。
(連続写真はこちら)
水槽内には葉の裏や、木の下など探せば沢山のコオロギが隠れています。 |
コオロギよりスイミーのほうが美味しいいのでしょうか?。
それともハンティングが面倒なのでしょうか?。
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やがて子カナヘビたちは、労せずして簡単に手に入るスイミーの魅力に取り付かれてしまい、コオロギを追いかけるのをやめてしまいました。
朝、照明が点灯すると同時に餌皿の中に居座りスイミーを食べるようになりました。
スイミーを食べている姿を仲間に見られたくないというわけではないでしょうけど、不思議と2匹同時に餌皿の中に居座る事はありません。 |
3匹の子カナヘビがスイミーを食べるようになりましたが、お互い時間をずらしてスイミーを食べています。
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