知床半島が世界遺産に登録されて、1年がたちました。
観光客の増加で新たな問題も発生しているようですが、昔からの問題であるエゾシカの食害もかなり深刻化してきたようです。
ササや木の樹皮などを根こそぎ食べてしまい、生態系に大きな影響を及ぼすことが懸念さるため、とうとうエゾジカを駆除することに決めたそうです。
しかしなぜ、人間がほとんど手をつけていない大自然にもかかわらず、エゾシカの駆除という形で人間が手を加えないと生態系が維持できないのでしょうか?。太古の昔より生態系が維持されてきたはずなのに、なぜ近年になって生態系を維持するのに人間の力が必要になってしまったのでしょうか?。
答えはエゾシカを捕食する肉食獣の不在にありました。
そう、人間によって絶滅させられてしまったオオカミの不在です。
そういえばアメリカでも同じような問題がありました。
家畜を襲うという理由で人間がオオカミを絶滅させてしまったためにバッファローが大繁殖し、草原の草を食い尽くしてしまいました。草がなくなってしまったため、バッファローは草の根までも食べるようになりました。
そして、足で草の根を掘り起こす行為が土を踏み固めてしまう結果になり、やがて豊かな草原は草の生えない荒地へと変貌してしまいました。
しかしアメリカでは絶滅してしまったオオカミをカナダから移住させ、生態系の番人として復活させる事に成功しました。
農耕民族である日本人にとって、オオカミは農作物を食い荒らすシカなどを駆除してくれるとてもありがたい益獣で、神格化された存在でもありました。夕方のニュースなどでたびたび目にするイノシシやサルの問題なども元をたどればオオカミの不在によるものなんですよね。
しかし、夜釣りに行った時やクワガタ採集に行った時、オオカミに遭遇する危険を覚悟してまでオオカミの復活を望むことが出来るのかと言われるとちょっとつらい。付近の住民にとってみれば、我が子が学校帰りにオオカミと遭遇する危険さえある。
オオカミが身近な存在でなくなってしまい、西洋から来た悪いイメージだけがすっかり定着してしまった今日となっては、オオカミの復活はとても難しい問題になってしまったようです。 |