さて、購入車は3車種に絞られました。
「トヨタ・ヴィッツ」「ホンダ・フィット」「マツダ・デミオ」
カタログを見ながらどれにしようか、あれこれ思い悩んでいる時、大事な事に気が付いた。
「あれ、日産は?」
そう、今回車を買おうと思ったのは日産の営業マンのご提案から。
その日産の車が最終選考に残っていないどころか、エントリーさえしていなかった。
「どうして?」
ネットで調べたときのエントリー表を見てみると、そこには日産の車が4台も書かれている。
マーチ、ノート、ティーダ、ラティオ
マーチのデザインはさすがに見飽きた。
ノートやティーダ、ラティオはエンジンが1500cc以上の設定しかなく、1300ccクラスでさえ
予算ギリギリな状態で、とても手が出そうにない。
「1300ccクラスはマーチだけだったのかな?」
もう一度日産のホームページで確認してみると、キューブという車種がありました。
あの角ばった形は生理的に受け付けない(^_^;)
今回は日産からのエントリーはゼロ。
とは言うものの、新車購入の提案をしたのは日産の営業マン。
なのに声さえかけられず、ウチの車庫に他メーカーの新車が置いてあるのを見た時の日産の
営業マンの心境を考えると・・・・。
「とりあえず、今回のエントリーからもれた事だけでも報告しておくか・・・」
気は進みませんが、人として避けては通れない道のようです。
「いらっしゃいませ」
商談前に断るという、前代未聞の珍客とは知らず、満面の笑みで迎え入れる日産の方。
心が痛い。
「田中(仮名)さん、おりますか?」
担当してくださっている営業の方を呼んでもらう。
「お飲み物などはいかがでしょう」
田中さんを待つ間に飲み物を勧められた。
コーヒー、紅茶、オレンジジュースなどがあるのかと思いきや、エスプレッソだのカフェラテだ
の小洒落たものばかり。
聞いたことはあっても飲んだことはないものだけに、3,4種類頼んで飲み比べてみたかったけ
ど、断りに来ている以上それは出来ない。たとえ新車を買うにしても出来そうにない(笑)。
「お気遣いなく」
しばらくして田中さんが来た。
「えっと、とりあえず新車を購入する事にしたんですが」
語尾の「ですが」の「が」の部分を必要以上に強調し、田中さんが一瞬でも勘違いしないように
配慮。他人の落胆ぶりを見て楽しむ趣味はないので落差は小さい方が良い。
「申しわけありませんが、今回は他のメーカーの車にする事にしました」
「えっ、えっえっ」
田中さんは私のとっぴな発言に驚き、奇声を上げて身を乗り出し口を半開きにしている。
そりゃそうだ、買うことにして、商談があって、断るのが普通なのに、大事な「商談」の部分が
抜けている。ドリフの学園コントなら、一番大切な「礼」を抜かした「きりーつ、ちゃくせきー」の
パターンだ。いかりや長介さんなら机に頭をぶつけている。
まだ口がふさがらない田中さんに、とりあえず事情を説明。
マーチとキューブは形が苦手なこと、その上の1500ccクラスになると予算的に厳しいことを
理由に挙げ、日産にはエントリーする車種が皆無で、今回は他メーカーからの購入になること
を告げた。
田中さんも素直に引き下がるわけがない。そりゃ分かっている。
でも、いくら説得しても、嫌いな形が好きになるわけがない。
ニンジン嫌いの子供に「ニンジンは栄養があるんだよ」と説得するのとは訳が違う。
嫌いな形を好きにするための合理的理由などあるわけない。
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「ノートという1500ccクラスの車があるのですが、こちらで何とかご検討を・・・」
「エントリーされているのは全部1300ccですから、1500ccではどう考えたって価格的に太刀打ちできませんよ」
「見積もりだけでもさせていただけませんか?」
「わざわざそんな事をしていただいても、お手間をおかけするだけです」 |
「乗れば良さが分かります。試乗車がありますので、ぜひ一度乗ってみてください」
「いや、もう暗いですから、乗っても良さが分からないでしょう」
「では明日、試乗していただけませんか?」
「明日はエントリーしている車の試乗の予約を入れておりますので」
とりつくしまもないというか、けんもほろろというか・・・・(^_^;)
しかし最終的には断る事になるので、くだらない同情から、相手に希望を持たせてしまう方が
酷というものです。
すがりつく田中さんを、心を鬼にして振り払い帰路につきましたが、やはり後味は悪いもので
す。
家に帰って食事を済ませ、テレビを見ていると、ピンポーンと玄関のベルが鳴った。
時刻は午後7時過ぎ。
「こんな時間にいったい誰が・・・」
友人?いえいえそんな事はありません。サッカー日本代表の試合がある時に、訪ねるどころ
か、電話をかけただけでも私に殺されかねない事はすでに周知の事実です。
ディーラーをたくさん回ったので、営業マンが来たのかもしれないと思いましたが、さすがにこ
の時間、それはないでしょう。
「どなたですか?」
「日産の田中です」
おいおい(^_^;)
ドアを開けるとそこには神妙な面持ちで、日産の田中さんが立っていた。
「あの〜、夜遅くすみません。どうしても乗って頂きたくて、ノートの試乗車をお持ちしました」
「だって、今何時だと思っているんですか」
キレるというよりちょっと呆れ気味。すると、田中さんは予想外の事を提案してきた。
「ノートをこのまま置いて行きますので、明日、試乗のためにディーラを回る時の足代わりにご
使用ください」
う〜ん、そう来たか。
「一日中乗ってもらってもかまいません。ガソリンを全部使ってしまってもかまいません」
「でも、今晩路上駐車って訳にも・・・」
「マークUは私どもが責任を持って預かります」
断る理由がないと自分に言い聞かせ、とりあえずノートを預かる事に。
しかし、結局は熱意に負けて情でノートに乗る事になったんだよなぁ。
断るのを先延ばしにすればするほど、お互い辛くなるのは分かっているのに・・・・。
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