うちの工場は住宅地のど真ん中にある。
というより、うちは戦中から軍需工場としてこの地にあったから、うちの工場の周りが住宅地になったというべきか。戦中は類焼を免れるため、うちの工場の周りの住宅はすべて取り壊されたらしい。
ハンドメイドルアー「BANZAI」を作っている佐々木さんの工場も近所にある。あちらは木型、うちは金型。
今日、仕事をしていると「すみません」の声。近所の仕事仲間は挨拶なしに、ずかずか入ってくるからセールスと思ったが、子供の声。工場に子供、しかも切羽詰った声だったので直感的に事件と思い飛び出した。
友達が怪我をしたらしい。その子についていくと子供が一人うずくまっていた。
泣いている、怪我は・・・・思ったよりひどくない。でも、病院で新患受付をして待合室で待つような傷ではない。救急車を呼んだ。
救急車が来る間、気晴らしになるだろうと、怪我をした子供と世間話をしながらふと思った。
人がいない。
周りに2階建てや3階建てのアパートやマンションがいっぱいあるが、そこに人の気配がない。救急車を呼んで、搬送されるまで20分くらいの時間があっただろうか。その間、このことに気付いた人は営業中のサラリーマンただ一人だけだった。
働きに出ている人が多いから仕方がないのかもしれないが・・・。
うちの工場はガチャコンガチャコン音がしたから助けを求めてきたんだね。
最近、子供が事件に巻き込まれる報道をよく耳にする。
なんとなく考えさせられた一日だった。 |