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2005年12月17日 温度管理
狭いワインセラー内で飼育していた幼虫たちを、広い温室へと移したので、観察がとても楽になりました。

個体数が例年より多いので、観察に適した幼虫、それも個体差の少ないメスの幼虫だけピックアップしても、1つの棚を占領して余りあるほど。

これだけ観察に適した幼虫がいると、観察するのが楽だし楽しい。それに幼虫たちに多数決を取るにしても、かなり正確なデータが得られそうです。

ワインセラー内で低温飼育した幼虫たちはどうなったでしょう。
温室に移してから3日ほどで、いきなり変化が現れました。

いままで、あんなに慎ましやかに蛹室のようなものを作って居食いを続けていた幼虫たちが、いきなり暴れ出しました。

暴れる幼虫たちは後を絶たず、一週間に5頭、6頭といったペースで現れます。

菌糸ビンはたっぷり用意してありましたので、ビンの交換はスムーズに行きましたが、それにしても暴れだす幼虫の数には驚かされました。

「どうしてこんな事に・・・・」
ワインセラーから温室に移しただけ。しかし、そこには小さな変化がひとつだけありました。

ワインセラーは24℃でサーモが起動するように微調整してあります。
そして温室も24℃でサーモが起動するように調整してあります。
その違い・・・・。

えっ、違わないって?。いえいえ、そこには小さな違いがあるんです。

ワインセラーは冷やしているので、24℃でサーモが起動すると、22℃〜24℃の温度帯で推移します。逆に温室は暖めているので24℃でサーモが起動すると24℃〜26℃の温度帯で推移します。その差たったの2℃。

幼虫たちはその2℃の違いを敏感に感じ取り、居食い部屋を抜け出して新天地へと旅立ったようです。

「2℃の上昇を嫌ったのかな」
居食い部屋を抜け出したということは、今の状況を嫌っての事だと思われます。
となれば、2℃の上昇を嫌ったのでしょうか。
しかし、2℃の上昇で幼虫が活動的になったと言う事も考えられます。

22℃〜24℃が適温か、それとも24℃〜26℃が適温か・・・・
現時点での幼虫の大きさを比べてみればそれなりの結果が得られそうです。

さっそく、暴れ出した幼虫たちのビンを変えてみる事に。
暴れているのはほとんどがメス。オスもおりますが、メス5に対してオス1の割合。

体重は・・・・・メスは平均すると7グラム程度。オスも17グラム前後が多い様です。
ワインセラーで低温飼育していない幼虫はというと、メスの平均は10グラム超え、オスも20グラム超え。

「やはり、2℃の上昇によって幼虫たちが活動を開始したと見るべきか・・・・」
どうやら22℃〜24℃という温度帯では幼虫の活動が阻害されてしまうようです。
きっと冷夏で作物の育成が遅れたような状態になってしまっていたのでしょう。

22℃〜24℃という温度帯は、少なくとも割り出し後の幼虫の成長には適していない温度帯だという事がはっきりしました。
しかし、これはたくさんの幼虫たちの育成を阻害してしまうという、大きな失敗によって得られた結論です。実験結果としてはあまりにも代償が大きすぎました。

たった、2℃の違いをしっかり感じ取って活動を再開するオオクワガタの幼虫たち。
「この辺の温度帯は幼虫にとって、かなりナーバスなのかもしれない」
そう考えると24℃〜26℃のちょっと上の温度帯を調べてみたくなる。

28℃を中心とした27℃〜29℃の温度帯。
日本の昆虫は24℃が適温のようですが、葉などではなく、消化しにくい朽木を主食としているシロアリは、もう少し高温となる風呂場などを好むようです。

多湿を好んでいるのではないかとも思われますが、どうやら多湿だけではなく高温であることもシロアリにとっては好条件のようなのです。理由としてセルロースを分解する共生菌が活動しやすいことが挙げられるようです。

オオクワガタの幼虫にセルロースを分解する共生菌がいるのか。そもそもシロアリは28℃を好んでいるのか・・・・そんなことは分かりませんが、とりあえず2℃の温度差で大きな発育の違いが出ることが分かったので、28℃での飼育実験もしてみましょう。

「しかしなぁ〜、もうひとつ温室を作るとなるとスペースが・・・」
もはや、温室を作るスペースなどありません、何かいい方法はないものか。

しばらく悩みましたが良い方法が見つかりました。
それは空になったワインセラー。保温効果の高いワインセラーです。あの中にパネルヒーターを入れてあげれば、それだけで温室が出来上がります。ヒーターを制御するのは、これまた冬の間は使っていない改造冷蔵庫に取り付けてあるサーモスタッド。

「いいアイデア」
あとは熱源となるパネルヒーターを買ってくれば出来上がりです。

さっそく、近くのホームセンターに熱源となるヒーターを買いに出かけました。
とりあえずペットコーナーへ。そこには爬虫類などに使うためのパネルヒーターがおいてあります。お値段3000円程度、しかし、そこにはどれくらいの電力量なのか書いてありません。

「保温効果があるとはいっても、それなりの出力がないと28℃まで上がらないだろうな」

他に良い物はないかと暖房器具コーナーを物色。するとそこですごいものを発見。
45cm角のホットカーペット。
机の下などに置いて足を暖めるために使うようです。

その値段が1500円!。温室用に売っているパネルヒーターよりずっとお安くなっています。
「これだ!」と思ったのも束の間、45cm角というと温室用にはちょうど良い大きさですが、ワインセラーでは大きくて入らないことが発覚。そして失意の帰宅・・・。
「第2温室はあきらめよう」

それから数日が過ぎて、いつものように部屋の電気を消して、赤い電球をつけたスポットライトで幼虫たちを観察しているときにひらめいた。
「そうだ、このスポットライトを使えば・・・」
スポットライトは40Wの電球まで使用可能。しかも触れなくなる程の発熱があります。

さっそく実験です。
スポットライトに40Wの白色電球をつけてワインセラー内に投入。
扉を閉じて温度の変化をじっと待ちます。

すると、10℃を示していた温度計が1分もたたずに11℃に上昇。
その後も順調に温度が上昇し、4時間後には28℃になりました。

ワインセラーも菌糸ビンも28℃に温まれば、長時間電球がついていることもなくなり、それほど電気代もかからないでしょう。

スポットライトの発熱を発散させるためのファンを取り付け、そして乾燥防止用の水を張ったトレイをセットして温室の完成!。

発育不良となってしまった幼虫たちを数頭入れて27℃〜29℃での飼育の開始です。

24℃〜26℃で飼育している他の発育不良の幼虫たちと比べてどうなるでしょうか。
大きくなるかどうかというのはもちろんのこと、活動期間や蛹化のタイミングなどにも注目しながら観察していきたいと思います。

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